クリーンベンチ クラス100の定義と選定基準を完全理解
「上司から『クリーンベンチはクラス100のものを選定して』と言われたけれど、カタログを見てもISO基準ばかりでよく分からない…」
そんなふうに、頭を抱えていませんか?
再生医療や細胞培養の現場に配属されたばかりの新人担当者さんにとって、設備の専門用語や規格の違いは最初の高いハードルですよね。
実は「クラス100」という言葉は米国連邦規格(Federal Standard 209E)に基づく古い規格なのですが、現場では今でも当たり前のように使われているんです。ここを理解しておかないと、業者さんとの会話も噛み合わなくなってしまうかもしれません。
この記事では、クリーンベンチにおける「クラス100」の正確な定義から、ISO規格との換算、そして細胞培養加工施設(CPC/CPF)での適切な機器の選び方までを、専門用語を噛み砕いてやさしく解説します。
さらに、再生医療分野で重要となる法律の違いや、CDMO(外部委託)という選択肢についても触れていきますね。
正しい知識を身につけて、自信を持って最適な設備を選べるようになりましょう。
クリーンベンチにおける「クラス100」の定義と基準

まずは、今回のテーマである「クラス100」という言葉が、具体的にどのような清浄な状態を指しているのかを見ていきましょう。
「クラス100」とは、かつて米国連邦規格Federal Standard 209Eで定められていた清浄度の基準のことです。
具体的には、「1立方フィート(約28.3リットル)の空気中に、0.5μm(マイクロメートル)以上の粒子が100個以下」という状態を指します。
普通のオフィスの空気中には、目に見えないホコリが数百万個も浮遊していると言われていますから、クラス100がいかに清浄な空間か想像できますよね。
このレベルの清浄度は、細胞培養や無菌操作を行う上で非常に重要な基準とされており、クリーンベンチやバイオロジカルクリーンルームの性能を示す指標として、長年親しまれてきました。
ポイント
- 基準となる体積は「1立方フィート」
- 許容される粒子数は「100個以下」
- 対象となる粒子の大きさは「0.5μm以上」
ISO規格(ISO 14644-1)の「クラス5」との関係と換算
現在、国際的な清浄度の基準は「ISO 14644-1」という規格に統一されています。
カタログなどで「ISOクラス5」という表記を見かけたことはありませんか?実は、この「ISOクラス5」が、従来の「クラス100」に相当するレベルなんです。
機器選定の際は、以下の換算イメージを持っておくとスムーズですよ。
| 旧規格(Federal Standard 209E) | ISO規格(ISO 14644-1) | 状態の目安 |
|---|---|---|
| クラス100 | ISOクラス 5 | 無菌操作を行うクリーンベンチ内 |
| クラス10,000 | ISOクラス 7 | 一般的なクリーンルーム内 |
| クラス100,000 | ISOクラス 8 | 更衣室や前室など |
古い図面や指示書では「クラス100」、新しい機器のスペック表では「ISOクラス5」と書かれていることが多いですが、求めている清浄度レベルは同じだと考えて差し支えありません。頭の中でサッと変換できるようにしておきましょう。
クラス100環境を実現する機器の選び方

「クラス100(ISOクラス5)」の環境が必要だと分かったところで、次は実際にどの機器を選べばよいかという問題に直面しますよね。
実は、「清浄な空間を作る」という目的は同じでも、何を守りたいかによって選ぶべき機器はガラリと変わります。
ここでは、クリーンベンチと安全キャビネットの違いや、細胞培養加工施設(CPC/CPF)に適した選び方のポイントをご紹介します。
試料保護のみなら「クリーンベンチ」、作業者保護も必要なら「安全キャビネット」
機器選びで最も大切なのは、「作業者への安全対策が必要かどうか」という点です。
クリーンベンチは主に作業台内部の試料保護を目的とし、HEPAフィルターを通した清浄な空気が作業台上に流れる構造です。危険性のない無菌操作や培地調整などに適しています。
一方、安全キャビネット(バイオロジカルセーフティキャビネット)は、作業者や環境も保護する目的があり、陰圧構造で開口部から空気を吸い込み、HEPAフィルターを通して排気します。感染リスクのあるウイルスやヒト由来試料などの作業に適しています。
- クリーンベンチ
- 守るもの: 試料(細胞や培地など)
- 気流:清浄空気が作業台上に流れる
- 用途:無菌操作や調整
- 安全キャビネット
- 守るもの: 試料 + 作業者+環境
- 気流:開口部から吸引し、HEPA排気
- 用途: ウイルスやヒト由来試料など、感染リスクのある作業
もし、扱う細胞や試薬が作業者に害を及ぼす可能性がある場合は、迷わず安全キャビネットを選んでください。逆に、単なる無菌操作だけであれば、クリーンベンチの方がコストを抑えられるケースが多いでしょう。
細胞培養加工施設(CPC/CPF)での利用を想定した気流方式の選定
細胞培養加工施設(CPC/CPF)で細胞を扱う場合、清浄度だけでなく「気流の方式」にも気を配る必要があります。
クリーンベンチには主に「垂直気流式」と「水平気流式」がありますが、細胞培養加工施設ではクロスコンタミネーション防止や作業性の観点から、 垂直気流式クリーンベンチ(バーチカル型)が主流です。ISOやPIC/S GMP Annex 1でも、無菌操作には垂直気流式が推奨されています。
- 垂直気流式(バーチカル):
- 上から下へ風が流れるため、機材の後ろにデッドスペースができにくく、交差汚染のリスクを低減しやすい。
- 水平気流式(ホリゾンタル):
- 奥から手前へ風が流れるため、手元で作業すると下流にある試料が汚染される可能性があります。
導入予定の施設のガイドラインやSOP(標準作業手順書)とも照らし合わせて確認してみてくださいね。
再生医療分野での導入時に知っておきたい法規制

再生医療の分野で設備を導入する際、避けて通れないのが法律や規制の理解です。
「何を作るか」によって適用される法律が異なり、必要な許可や設備の要件も変わってくるため、ここは非常に重要なポイントになります。
少し複雑に感じるかもしれませんが、新人担当者さんがまず押さえておくべき「安確法」と「GCTP(薬機法)」の違いについて、分かりやすく整理していきましょう。
安確法とGCTPにおける製造許可・対象製品の違い
再生医療に関わる際、よく混同されがちなのが「安確法」と「薬機法(GCTP省令)」です。
これらは、製造する「モノ」と、それをどのような目的で使うかによって明確に区分されています。以下の表で違いを確認してみましょう。
| 項目 | 安確法(再生医療等の安全性の確保等に関する法律) | 薬機法(GCTP省令) |
|---|---|---|
| 作るもの | 特定細胞加工物 | 再生医療等製品 |
| 目的 | 医療機関で提供(自由診療・臨床研究) | 製品として販売・し、広く流通させる(製造販売承認) |
| 必要な許可/認可 | 特定細胞加工物製造事業者認定 | 再生医療等製品製造業許可 |
例えば、病院内で医師の管理下で行う治療のために細胞を培養する場合は「安確法」の範疇になりますが、製薬企業のように製品として細胞を売り出すなら「薬機法」の厳しい基準(GCTP)をクリアしなければなりません。
自社のプロジェクトがどちらを目指しているのかによって、施設(CPC/CPF)に求められるハードルも変わってくるので注意が必要です。
設備導入とCDMO(外部委託)活用の判断ポイント
自社で細胞培養加工施設(CPC/CPF)を建設し、クリーンベンチなどの設備を揃えて維持管理するには、莫大なコストと労力がかかります。
そこで検討したいのが、CDMO(Contract Development and Manufacturing Organization)、つまり医薬品開発製造受託機関への「外部委託」です。
CDMOは、再生医療等製品や特定細胞加工物の製造を受託する専門機関であり、GCTPや安確法等の法規制に対応した施設・管理体制を持ち、品質管理やバリデーションも担います。
- 自社で設備導入:
- メリット: ノウハウが蓄積される、柔軟なスケジュール調整が可能。
- デメリット: 初期投資が大きい、維持管理やバリデーション(適格性確認)の手間がかかる。
- CDMOへ委託:
- メリット: 専門家の高品質な環境を利用できる、初期投資を抑えられる。
- デメリット: 委託コストがかかる、自社に製造ノウハウが残りにくい。
特に立ち上げ初期や、将来的な製造量が不確定な場合は、無理に自前でクラス100の環境を作るのではなく、信頼できるCDMOを活用するのも賢い戦略の一つでしょう。
まとめ

今回は、クリーンベンチ選定の際に新人担当者さんが悩みやすい「クラス100」の定義から、機器の選び方、そして再生医療分野特有の法規制までを解説してきました。
要点を振り返ってみましょう。
- クラス100の定義: 1立方フィート中に0.5μm以上の粒子が100個以下(ISOクラス5相当)。
- 機器の選定: 試料保護だけならクリーンベンチ、作業者保護も必要なら安全キャビネット。
- 気流方式: 垂直気流式クリーンベンチが細胞培養加工施設で主流。
- 法規制の区別: 特定細胞加工物(安確法)か、再生医療等製品(GCTP)かを確認する。
- 外部委託の検討: 自社設備だけでなく、CDMOの活用も視野に入れる。
専門的な用語が多くて最初は戸惑うかもしれませんが、一つひとつの言葉の意味を理解していけば、必ず最適な設備選びができるようになります。
この記事が、あなたのスムーズな業務遂行の助けになれば嬉しいです。焦らず、一歩ずつ進んでいきましょう。
